雪はなぜ白いの?

公開:2026-07-17 更新:2026-07-17 読了 約6分

図解

1 STEP 1 雪の結晶1個は透明な氷でできている 2 STEP 2 結晶と結晶の間に空気がたくさん入る 3 STEP 3 光が境界で何度も屈折・反射する 4 STEP 4 あらゆる方向に光が散らばる(乱反射) 5 STEP 5 全ての色が同じ強さで返るので白く見える 6 STEP 6 圧縮して気泡が抜けると青い氷河になる

図解:問いを6ステップで読みとく流れ(自動生成)

氷のつぶで光がいろんなほうに反射して白く見えるから。

ゆきの一つひとつは、じつはすき通っている氷のつぶでできています。コップに入った水がすき通って見えるのと同じで、氷もそのままなら向こうがわが見えるくらいき通っているのです。

それなのに、ふってきた雪が白く見えるのは、たくさんの小さな氷のつぶが重なり合っているからです。光がつぶに当たると、まっすぐぬけずに少しずつ曲がったり、はね返ったりします。それがあちこちのつぶでたくさん起きると、光はいろいろなほうにちらばっていきます。これをらんはんしゃといいます。

まっ赤や青ではなくいろんな色の光が同じくらいに反射されると、わたしたちの目には「白」として見えます。雪はちょうどそういうふうに、太陽の光をいろんな色のままちらばらせているので、白くかがやいて見えるのです。

おもしろいことに、雪が長い時間つもってぎゅっとかたまると、空気のつぶがへって光が中までとどくようになります。すると今度は氷河のように青く見えるんですよ。同じ水からできているのに、見え方がぜんぜんちがうのは、ふしぎですね。

雪が白く見える本質は光の乱反射である。気象庁の解説によれば、雪の結晶一つひとつは無色透明な氷でできているが、細かい結晶が大量に折り重なることで光があらゆる方向に散乱され、結果として人の目には白色として知覚される。同じ氷でも、氷河のように長期間圧縮されて気泡が抜けると、光が深部まで届くようになり、水が赤い波長を吸収しやすい性質によって青味が強く見えるのだ。雪の白と氷河の青は、構造の違いがそのまま色の違いになる好例である。すりガラスや砂糖の山が白く見えるのもまったく同じ原理だ。粒子のサイズと配列が光の振る舞いを決めるという物理の素直さに、雪は今日も静かに気づかせてくれる。降ったばかりの新雪が眩しいほど明るく、踏みしめた雪が翳って見えるのも、密度と気泡量の違いが反射率を変えているせいなのだ。

仕組みの科学

雪の結晶は六角形の対称性を持つ氷の単結晶で、それ自体は無色透明である。降雪のときに地表に積もる雪は、結晶と結晶のあいだに大量の空気をはらんだ多孔質の構造になっており、この境界面が光学的に重要な役割を果たす。光が氷の内部に入ろうとすると屈折率の違いから一部が反射し、内部に入った光もまた次の氷と空気の境界で屈折と反射を繰り返す。可視光のあらゆる波長がほぼ均等に散乱されるため、特定の色に偏らず白として知覚される。これが乱反射、あるいは多重散乱と呼ばれる現象である。

新雪は粒径が小さく空気の含有率が高いため反射率(アルベド)が非常に高く、太陽光の8割以上を返すことが知られている。一方で雪が古くなり粒径が大きくなると気泡が減り、反射率は徐々に下がる。同じ「白い雪」でも、降りたてのパウダースノーと数日たった圧雪では微妙に明るさが異なるのはこのためだ。さらに気温が上がって表面が一度溶け、再び凍ることで結晶どうしが融合し粒径が大きくなる「焼結」も、雪面の白さを徐々に鈍らせる要因となる。雪の白さは光と物質構造の絶え間ない対話そのものである。

歴史と発見

雪の科学的研究は近代物理学の発展とともに進んだ。17世紀の天文学者ヨハネス・ケプラーは『六角の雪片について』と題した論文で雪結晶の対称性を哲学的に論じ、自然界に秩序を見いだそうとした。19世紀から20世紀にかけては、顕微鏡や写真技術の発達により雪の結晶が体系的に観察・分類されるようになった。日本では中谷宇吉郎が北海道大学で人工的に雪結晶を生成する実験に成功し、気温と湿度によって結晶形が変わることを示した中谷ダイアグラムを1936年に発表した。

光の乱反射が白色の正体だという理解は、19世紀の光学と色覚の研究から導かれた。三原色のすべてが等しい強さで眼に入ると白として認識されるという知見と、多孔質物質が光をあらゆる方向に散乱させるという物理の知見が結びつき、雪の白さの説明が確立された。気象庁や国立極地研究所などは、現在も衛星観測や現地観測を通じて積雪の反射率を測定し、地球の放射収支や気候モデルの精度向上に役立てている。雪の白さは芸術や文学だけでなく、地球科学の最前線でも今なお研究テーマである。

もう一歩先

雪の白さ、すなわち高いアルベドは、地球の気候を考えるうえで決定的に重要な変数である。雪面は太陽光のうち可視光だけでなく近赤外領域もよく反射するため、極地や高緯度の積雪域は地球を冷やす働きを持つ。温暖化が進んで積雪面積が減ると、暗い地表や海面が露出し太陽光をより多く吸収するため、温度上昇がさらに加速する。これは「アイス・アルベド・フィードバック」と呼ばれる気候の正のフィードバック機構で、近年の北極海氷の減少が地球全体の温度変化に与える影響として活発に研究されている。

身近な暮らしのスケールでも雪の白さは様々な顔を見せる。スキー場で雪面が眩しく感じるのは紫外線が強く反射されているためで、雪目と呼ばれる角膜の炎症を防ぐためにゴーグルが推奨される。逆に雪上のすす粒子や黄砂が増えると反射率が下がり融雪が早まることも観測されており、大気汚染と雪解けの関係も気候研究の重要なテーマだ。日々目にする雪の白さの背後には、地球規模の物理現象と人間活動が静かにつながっている。次に雪が降ったら、ただ「白いね」で終わらせず、結晶と気泡と光のダンスを思い浮かべてみてほしい。

🌱 ためしてみよう!3択クイズ

本文をよんでこたえてみよう。タップでせいかいがでるよ。

Q1. 雪の一つひとつの氷のつぶは、どんな色をしているの?
こたえ:すきとおっている(とうめい)
雪の結晶はガラスのようにすきとおっていて、色はついていません。でも、たくさんの氷のつぶが重なると、光があちこちにはねかえって目に届くので、白く見えます。まるでくだいたガラスが白く見えるのと同じしくみです。
Q2. 雪が白く見えるのはどうして?
こたえ:氷のつぶで光があちこちに反射するから
雪の中にはたくさんの氷のつぶとすき間(空気)があります。光はつぶとつぶの間でどんどんはねかえり、いろんな方向に広がります。その結果、あかるい光がたくさん目に届くので、雪は白く見えます。
Q3. 雪のかげ(かげになった部分)は何色に見えることがある?
こたえ:青い色
太陽が出ているときに雪のかげをよく見ると、うっすら青く見えることがあります。これは、青い光は雪の中を少し通り抜けるため、かげの部分に青みが残って見えるからです。雪は白いだけじゃなく、じつは青さも持っています。

👤 大人のちょっとした雑学

雪の影が青い科学的理由

雪は全波長をほぼ均等に散乱するため白く見えるが、厚い雪の層では青色光(波長短め)が赤色光より奥まで透過する。このため日陰や雪の亀裂は薄青く染まる。氷河の内部が青いのも同じ原理で、圧縮された氷は気泡が少なく多重散乱が減るためだ。

レイリー散乱と雪の散乱は別物

空が青いのは粒子よりはるかに小さい分子によるレイリー散乱で、短波長光が強く散乱される。一方、雪の白さはミー散乱と呼ばれる現象で、光の波長より大きい氷粒子が全波長をほぼ均等に散乱するため白く見える。同じ「散乱」でも粒径によって全く異なる色が生まれる。

人工雪を初めて作ったのは日本人

1936年、中谷宇吉郎が世界で初めて人工的に雪の結晶を作ることに成功した。低温室でウサギの毛を核にして結晶を成長させたもので、「雪は天から送られた手紙である」という名言も残している。この成果は雪結晶の形が気温と水蒸気量で決まることを解明する礎となった。

🔬 とことん深掘り:読書ガイド

読み順ガイド(やさしい→専門)

  1. 雪(中谷宇吉郎・岩波文庫)
    雪の結晶研究の古典。科学エッセイとして読みやすく、雪が白い理由の前提となる結晶構造・人工雪生成の原理を平易に学べる入門書として最適。
  2. 光と色彩の科学(齋藤勝裕・ブルーバックス)
    発色の原理から色の見える仕組みを化学・物理の両面から解説。雪の白さ=ミー散乱の全波長均等散乱を、光学の文脈でより体系的に理解するための次の一冊。
  3. 光とはなにか(ファン・ヒールフェルツェル・ブルーバックス)
    光の本質を粒子と波動の二重性から論じる。ミー散乱・レイリー散乱の理論的背景を量子光学・電磁気学の視点で押さえるために読む。
  4. 色と光の科学(小島憲道・末元徹・KS科学一般書)
    物理と化学の双方から色彩の起源を論じた中級教科書。雪・氷・大気などの自然現象における散乱・吸収・干渉を系統的に学べる。
  5. 光の物理―光はなぜ屈折、反射、散乱するのか(小林浩一)
    電磁気学の基礎から出発し、散乱理論(ミー理論・レイリー近似)を数式で丁寧に展開。研究者として散乱現象を定量的に扱う前の必読専門書。

さらに進む方向

  • Mie理論の原典(Gustav Mie, 1908, Ann. Phys.)を読み、球形粒子の散乱断面積の解析解に進む
  • 雪結晶の成長メカニズム(拡散律速成長・BCF理論)を固体物理・表面科学の観点から深掘りする
  • 大気放射伝達論(放射輸送方程式)に進み、雪面アルベドの定量評価や気候モデルへの応用を学ぶ
  • 色覚・測色学(CIE表色系・分光測光法)に進み、「白さ」の定量的定義と知覚科学を学ぶ
  • 氷物理学(格子欠陥・誘電特性・圧電効果)に進み、雪・氷河・永久凍土の物性研究へ展開する

もっと詳しく:しくみのながれ

  1. STEP 1
    雪の結晶1個は透明な氷でできている
  2. STEP 2
    結晶と結晶の間に空気がたくさん入る
  3. STEP 3
    光が境界で何度も屈折・反射する
  4. STEP 4
    あらゆる方向に光が散らばる(乱反射)
  5. STEP 5
    全ての色が同じ強さで返るので白く見える
  6. STEP 6
    圧縮して気泡が抜けると青い氷河になる

ことばのメモ

乱反射
光がいろんな方向にちらばること
結晶
決まった形にならんだつぶ
アルベド
光をはねかえす度合い
屈折
光が物にあたって曲がること
気泡
氷や水の中にとじこめられた空気

よくある質問

氷は透明なのに雪はなぜ白いの?
氷の塊そのものは透明ですが、雪は細かい結晶と空気が無数に重なった構造です。境界で光が乱反射するため、白く見えます。
雪はなぜ眩しく感じるの?
新雪は太陽光の8割以上を反射する高いアルベドを持ちます。可視光だけでなく紫外線もよく反射するため、雪目を防ぐサングラスが推奨されます。
氷河はどうして青く見えるの?
圧縮で気泡が抜けると光が氷の深部まで届くようになります。水は赤い波長を吸収しやすいので、残った青い光だけが目に返り青く見えるのです。
雪が黄色やピンクに見えるのはなぜ?
黄砂や火山灰、特殊な藻類が混ざると色が変わって見えます。氷河や万年雪では赤い色をした雪藻が育つ場所もあり、研究対象になっています。

学びのタネ

この問いに関連する本・実験・サービスのご紹介です。

家でできること

  • コップに氷を1個と砕いた氷を入れて、見え方の違いを観察してみよう。
  • 白い紙にプリズムや透明セロハンを当てて、光を分けてから集めると白くなる様子を確かめてみよう。
  • 雪が積もった日に、家の窓ガラスごしに見える明るさを晴れの日とくらべてメモしてみよう。

この問いをもっと知りたい:おすすめ書籍(こども向け図鑑)

おとな向けに:新書・実用書

とことん深く:専門書・古典

読み放題・聴き放題

家でも教室でも、学びを深める

※ Amazonアソシエイト参加者として適格販売により収益を得ています。A8.net等の広告主から発番されるリンクは順次差し替えていきます。

出典・参考文献

  1. 気象庁雨・雪についてのFAQ(雪の結晶と乱反射) 参照 2026-06-26
  2. 名古屋大学 宇宙地球環境研究所極地50のなぜ 17. 氷河の表面やクレパスの中が青く見えるのは何故? 参照 2026-06-26
  3. キヤノンサイエンスラボ・キッズ雪はなぜ白い 参照 2026-06-26

出典・正確性ポリシー:詳しく読む