図解
図解:問いを6ステップで読みとく流れ(自動生成)
土の中の水が細いすき間を通ってあがり、冷えて氷の柱になるから。
冬の朝、校庭や畑のふちで、土から細い氷の柱が何本もはえているのを見たことはありませんか。ふむと「サクッ」と音がして気持ちがいい、あの「しもばしら」です。
じつは、しもばしらは地面の上にはる「しも」とはできかたがちがいます。日本科学未来館のせつめいによれば、しもばしらは土の中の水が、細いすき間を通ってゆっくり上へあがってきて、地面のちかくで凍って柱のようにのびていくのです。この水が細いすき間を上るはたらきを毛さいかんげんしょうといいます。
晴れた冬の夜、地面から熱がにげてすごく冷えると、土の表面だけがまず凍ります。その下から水がずっと上がってきて、次から次へと凍りついて柱がだんだん長くのびていくのです。柱の長さは数センチから、ときには十センチをこえることもあります。
だから、しもばしらができるためには、晴れた寒い夜と、細いすき間のある土(関東ロームなど)と、ちょうどよい水のりょうが必要です。3つの条件がそろってはじめて見られる、ふしぎな自然のしくみですね。
日本科学未来館の解説などによれば、霜柱と霜はまったく異なる現象である。霜は空気中の水蒸気が地物表面で直接凍りついたもの(昇華凝結)だが、霜柱は地中の水が毛細管現象によって地表付近まで吸い上げられ、そこで凍結を繰り返して氷の柱を作る現象だ。まず地表が放射冷却で0℃以下まで下がり表面が凍結すると、その下から地中水が細孔をつたって次々と上昇し、凍結面が持ち上げられて柱状の氷が伸びていく。
発生には晴天の寒冷な夜(放射冷却)と、粒径や孔隙構造が適切な土壌(関東ロームなど火山灰土が最適)、そして乾燥しすぎず飽和もしない適度な土壌水分量の3条件が揃う必要がある。イギリスやドイツでは気象や土壌の条件が異なるため稀な現象で、日本では関東平野・中部・南東北の平地に典型的に見られる。農業では作物の根を持ち上げる「凍上」が被害要因ともなり、地味に暮らしと結びついた自然現象なのだ。
仕組みの科学
霜柱の形成は「毛細管現象」と「凍結の繰り返し」という2つの物理過程の連動によって説明される。晴天で放射冷却が強い冬の夜、地表面付近の土は気温以上に急速に冷却されて0℃を下回る。日本科学未来館の解説によれば、まず土の表面近くの水分が凍結し、そのすぐ下から地中の水が土壌粒子間の細孔(キャピラリー)をつたってゆっくり上昇してくる。この現象が毛細管現象で、細いガラス管を水面に立てると水が管内を上る同じ原理だ。
上昇してきた水は凍結面の下側で次々と凍りつき、既存の氷柱を上方へ押し上げていく。この過程が一晩繰り返されることで、地表から数センチ〜十数センチの柱状の氷が生成される。重要なのは土壌条件で、東京大学溝口勝教授の土壌凍結講義でも、粒径や孔隙構造が適切な土(関東ロームのような火山灰土)でこそ毛細管が有効に機能する点が示されている。砂質土は粒径が大きく毛細管上昇力が弱く、粘土質は水分の移動が遅い。関東地方が霜柱の名所とされるのは、この土壌の絶妙な条件によるところが大きい。空気中の水蒸気が凍りつく霜(昇華凝結)とは発生源からして異なる。
歴史と発見
霜柱そのものは古来から日本の冬の風物詩として親しまれ、俳句の季語や子供の遊びの対象として文化に組み込まれてきた。学術的な研究の対象になったのは20世紀に入ってからで、農学・土壌物理学・気象学の交差領域で「土壌凍結(frost heaving・凍上)」として体系化された。日本では東京大学農学生命科学研究科の溝口勝教授らが「土壌の凍結」に関する研究を継続的に行い、農地凍害の防止や積雪・凍土の物理学的解析を進めている。
1990年代の造園学の研究では、霜柱発生の難易度に関わる土の物理性が定量的に分析された(造園雑誌1990年掲載論文『霜柱発生の難易に関与する土の物理性』・J-STAGE公開)。粒度分布・透水性・保水性・団粒構造といった土壌パラメータと霜柱形成の関係が明らかにされ、農業土木や造園設計の実務にも応用されている。海外では北欧・北米での「フロストヒーブ」研究が古くから積まれ、道路・鉄道・パイプラインの凍上被害対策として地盤工学の一分野を形成している。日本の関東ローム地帯は世界でも霜柱観察・研究の一大フィールドとなっている。
もう一歩先
霜柱は美しい自然現象であると同時に、農業と土木の分野では深刻な被害要因でもある。冬野菜や麦の根を持ち上げてしまう「凍上害」は、関東・東北・北海道の農家にとって古典的な課題で、藁マルチや被覆資材による対策が伝統的に行われてきた。土木の分野でも、寒冷地の道路舗装が春先に破損する「霜どけ被害」は凍上と融解の反復による地盤変位が主因で、寒地土木研究所や大学の研究室が対策工法を開発している。凍上のメカニズムは霜柱と本質的に同じで、身近な自然観察が国土インフラの科学に直結している。
もう一つ興味深いのは、シソ科の多年草「シモバシラ(学名 Keiskea japonica)」の存在だ。この植物は冬に枯れた茎の根元に霜柱のような氷の柱ができることで知られ、地中水由来の霜柱とはメカニズムが異なる(茎の中の水が凍結・膨張して側面から噴出)が、和名の由来ともなっている。気候変動により東京都心などでは霜柱を見る機会が減っているとも報告される。都市化と温暖化の複合影響で、身近な冬の風物詩が消えつつある現状は、地域気候の変化を実感する指標にもなる。
🌱 ためしてみよう!3択クイズ
本文をよんでこたえてみよう。タップでせいかいがでるよ。
Q1. しもばしらをつくる水はどこから来ているの?
Q2. しもばしらができやすい土はどれ?
細かい粒子と適度なすき間をもつ火山灰の土(関東ロームなど)が、毛細管現象で水を吸い上げるのに最適です。粒が大きすぎる砂質土や、水を通さないコンクリートでは霜柱はできません。関東地方が霜柱の名所とされる理由はここにあります。
Q3. しもばしらができやすい夜はどれ?
晴れた寒い夜は「放射冷却」で地面の熱が空へ逃げやすく、気温以上に地表が冷えて霜柱ができやすくなります。曇天や風のある夜は放射冷却が弱まり、雨の夜は水分が多すぎて霜柱の形成条件が崩れます。
👤 大人のちょっとした雑学
霜と霜柱はまったくの別現象
霜は空気中の水蒸気が地物表面で直接凍る昇華凝結現象、霜柱は地中の水が毛細管現象で上昇して凍り柱状に伸びる現象。名前が似ているが物理的発生機序も水の出どころもまったく違う、独立した2つの自然現象なのだ。
農業では厄介な「凍上害」
霜柱の発生は美しい風物詩である一方、農家にとっては冬野菜や麦の根を持ち上げてしまう「凍上害」の原因。関東・東北・北海道では藁マルチや被覆資材で対策する伝統がある。寒地土木では道路の霜どけ被害の主因でもある。
植物の「シモバシラ」は別メカニズム
シソ科の多年草シモバシラは、冬に枯れた茎の根元に霜柱状の氷ができることで知られる。ただし茎内部の水が凍結膨張して側面から噴出する現象で、地中水由来の霜柱とは発生機序が異なる。植物名の由来にはなっている。
🔬 とことん深掘り:読書ガイド
読み順ガイド(やさしい→専門)
- 土壌物理学入門(土壌科学教科書)
毛細管現象・土壌水移動・凍結融解サイクルなど、霜柱を科学的に理解するための基礎が体系的に学べる。全体像から入ると個別現象の解像度が上がる。 - 身近な自然観察ガイド(冬の自然)
霜柱・霜・氷・雪・つららなど冬の水と氷の現象を写真・観察方法とともに紹介する実用書。子どもと一緒に観察するための入口として最適。 - 凍上と寒地土木工学(地盤工学専門書)
霜柱と同じメカニズムで起きる凍上が、道路・鉄道・パイプラインなど土木構造物にどう影響するかを扱う。身近な現象から国土インフラへ視野を広げられる。 - 気候変動と身近な自然(環境科学読本)
都市化と温暖化で霜柱・霜・積雪が地域で減少している実態を、観察記録データから追う視点が得られる。身近な観察が長期気候変動の指標として機能する意義に触れられる。
さらに進む方向
もっと詳しく:図解
- 晴れた冬の夜放射冷却で地面から熱が空へ逃げ、気温以上に地表が冷える
- 表面凍結土の表面付近が0℃以下になり水分が凍り始める
- 毛細管現象地中の水が土壌の細孔を通って凍結面まで上昇
- 柱状に伸長上がってきた水が凍結面下で新たに凍り、氷柱を押し上げる
- 早朝の発見数センチ〜十数センチの氷柱が地表に露出
- 日中に融解気温上昇で溶け、凍上被害の原因となることも
ことばのメモ
- 毛細管現象
- 細いすき間を水が上るはたらき
- 放射冷却
- 地面から熱が空に逃げて冷える現象
- 関東ローム
- 関東地方の細かい火山灰の土
- 凍上
- 土や氷が持ち上がる現象
- 昇華凝結
- 気体が液体を経ずに固体になる現象
よくある質問
しもばしらとしものちがいは何ですか?
どんな土でもしもばしらはできますか?
なぜ晴れた夜にできやすいのですか?
シモバシラという名前の植物もあるのですか?
学びのタネ
この問いに関連する本・実験・サービスのご紹介です。
家でできること
- 晴れた冬の朝早く、公園の花壇や畑のふちを歩いてしもばしらを探し、踏んだときの「サクッ」という音を楽しんでみよう。
- 日本科学未来館の科学コミュニケーターブログ「霜柱実験」で、家庭で霜柱を作る実験の手順を確認してみよう。
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出典・参考文献
- 日本科学未来館霜柱実験① ~そうだったのか!霜柱!~ 参照 2026-07-25
- 東京大学大学院農学生命科学研究科土壌の凍結(溝口勝教授 講義資料) 参照 2026-07-25
- 気象庁氷、霜、霧、雷、日照時間 用語解説 参照 2026-07-25
出典・正確性ポリシー:詳しく読む
日本科学未来館のせつめいによれば、しもばしらは地面の中の水が細いすき間を通って上がってきて、地表付近で凍り、柱のように伸びる現象です。空気中の水じょう気が物の表面で直接凍る「しも」とは発生源が違います。