氷はどうして水にうかぶの?

公開:2026-07-17 更新:2026-07-17 読了 約6分

図解

1 液体の水(20度) 水分子がくっついたり離れたりして密に詰まる(密度1.0g /cm³) 2 水(4度) 水の密度が最大になる(密度異常) 3 氷Ih結晶(0度以下) 水素結合が正四面体状に規則配列し、すきまの多い六方晶(密 度0.917g/cm³) 4 体積変化 水100g→氷約110cm³(約9%膨張)

図解:問いを6ステップで読みとく流れ(自動生成)

氷は水よりすきまが多く、同じ体積なら軽いから。

コップに水と氷を入れると、氷は自然にプカプカうかびますね。あたりまえに見えるけれど、じつはとてもふしぎな出来事です。多くの物はやすとちぢんで重くなり、固体は液体にしずんでいきます。ところが水だけは逆で、氷になるときにふくらんで軽くなるのです。

名古屋大学の解説によれば、水は「水分子」という小さなつぶが集まってできています。1つの水分子は、酸素1つと水素2つが手をつないだ形。水分子どうしは、たがいを引きよせる「水素結合すいそけつごう」という力でつながっています。

液体の水では、水分子はくっついたりはなれたりして、動きまわっています。ところが0度まで冷やすと、水分子はきちんとならびます。1つの水分子のまわりに、ちょうど4つの水分子が正四面体の形にならぶのです。

このならび方は、六角形のすきまだらけの結晶になります。つまり氷は、同じ体積の水にくらべてすきまが多いぶんだけ軽くなります。だからうかぶのですね。

この「氷が水にうかぶ」という性質は、じつは地球の生き物にとってもとても大事。冬に池や湖の表面が氷でおおわれても、氷にまもられて下の水は凍らずにすみます。氷の下では、魚や水草がぶじに冬をこしていけるのです。

氷が水に浮くのは、水分子の特殊な性質による。名古屋大学ISEEや京都大学の解説によれば、水分子は酸素1原子と水素2原子が結合したV字形で、酸素側にわずかな負の電荷、水素側に正の電荷を持つ。この極性のため、水分子どうしは水素結合で強く引き合う。0度で凍ると、1つの水分子の周りに4つの水分子が正四面体状に配置し、六方晶系の氷Ih結晶を作る。この結晶は内部にすきまが多く、密度は水より約9%低い(水の密度1.0g/cm³に対し、氷は約0.917g/cm³)。密度が小さい方が浮くという物理法則のとおり、氷は水面に浮かぶ。ほとんどの物質は固体が液体より重いため、この現象は物理化学的にはかなり例外的だ。この性質のおかげで、冬に湖の表面が凍っても水中の生態系は保たれ、地球生命の維持に決定的な役割を果たしている。

仕組みの科学

氷が水に浮く現象の核心は、水素結合が作り出す構造にある。水分子H2Oは、酸素原子1個と水素原子2個で構成される折れ曲がった形の分子で、酸素は水素より電子を強く引き寄せるため、分子内で電荷の偏り(極性)が生まれる。この極性のため、水分子どうしは酸素と水素の間に強い引力(水素結合)を形成する。液体状態では水分子は水素結合を作ったり切ったりしながら乱雑に動き回り、比較的密に詰まっている。しかし0度まで冷やすと熱運動が弱まり、水分子は水素結合の方向性に従って規則正しく整列する。名古屋大学ISEEの解説によれば、氷結晶では1つの水分子の周りにちょうど4つの水分子が正四面体の頂点に配置され、これがつながって六方晶系の氷Ih構造となる。この構造は隙間が大きく、液体の水より密度が小さい(水1.0g/cm³に対し氷約0.917g/cm³)。密度差にして約9%、水100gが凍ると体積は約110cm³に膨らむ計算だ。氷が浮くのは、この分子レベルの隙間構造がマクロな密度差として現れているためである。

歴史と発見

水の異常な物性は古くから科学者を惹きつけてきた。十七〜十八世紀の温度計の発達で、水は4度で密度最大となり、それより低い温度でも高い温度でも密度が下がる「密度異常」を持つことが明らかになった。この異常性は、湖沼が冬に表面から凍り、底の水は4度を保って生態系を守る仕組みとしても認識されるようになった。分子構造の解明は二十世紀の量子力学とX線結晶構造解析の発展に伴い進んだ。水分子の折れ曲がった形と水素結合の方向性が氷の六方晶構造を作り出すことが明らかにされ、氷にはIhをはじめとする多数の結晶多形(現在は20種類以上のIce Ih〜Ice XXなど)が存在することも次々に発見された。産業技術総合研究所(AIST)や東京大学の近年の研究では、水と氷の界面に「未知の水」の存在が示唆され、水の異常物性を説明する2種類の水仮説の検証が進んでいる。日本では京都大学が高圧下で水分子の向きが揃った特殊な結晶氷を報告し、水の科学が地球生命の起源から宇宙の氷天体研究にまで広がっている。氷が水に浮くという身近な現象が、いまも最先端の研究テーマになっているのは水という物質の奥深さを物語る。

もう一歩先

氷が水に浮くという事実は、地球生命の存続に決定的な意味を持つ。もし氷が水より重くて底に沈むタイプの物質だったら、極地や冬の湖沼は底から凍っていき、水中生態系は破壊されてしまう。実際には氷が浮いて表面に断熱層を作るおかげで、底層の水は0〜4度に保たれ、魚類・水草・微生物が冬を越せる。この生態学的意味は、地球外生命の探査でも重要な考察対象だ。木星の衛星エウロパや土星の衛星エンケラドスには、厚い氷殻の下に液体の海が存在する可能性が高く、水の異常物性が生命維持に寄与している可能性がある。工学的には、水が凍るときの膨張が水道管の凍結破裂を引き起こす問題として現れ、建築・上下水道インフラの寒冷地対策に直結する。逆に、氷の膨張力を利用して岩石を割る「氷楔(ひょうけつ)風化」は自然界の造形の重要要因だ。学術的には、水と氷の科学は物理化学・地球物理学・生物学・材料工学・惑星科学が交差する総合研究領域である。「氷が水に浮く」というコップの中の当たり前は、地球の生命史と宇宙の海の探査の入り口。次にお茶に浮かぶ氷を見つめるとき、その一片が持つ意味の大きさを思い出してほしい。

🌱 ためしてみよう!3択クイズ

本文をよんでこたえてみよう。タップでせいかいがでるよ。

Q1. 水が氷になる時、体積はどうなるでしょう?
こたえ:ふえる(膨張する)
水はほとんどの物質と逆で、氷になる時に体積がふえます。水100gが凍ると約110cm³になり、約9%も膨張します。この膨張のせいで、同じ体積なら氷の方が軽くなり水に浮くのです。
Q2. 氷の分子はどんな形にならんでいるでしょう?
こたえ:正四面体を組み合わせた六角形の結晶
氷の中では、1つの水分子のまわりに4つの水分子が正四面体の頂点にならびます。これがつながって六方晶系の結晶になり、すきまが多いので水より軽くなります。
Q3. 氷が水に浮くことが、生き物にとってなぜ大事でしょう?
こたえ:氷が湖のふたになって下の水を守るから
冬に湖の表面が氷でおおわれても、氷が断熱層となって下の水は0〜4度に保たれます。魚や水草はこの環境で冬を越せます。氷が沈む物質だったら、生態系はまったく違う姿になっていたでしょう。

👤 大人のちょっとした雑学

水の「4度で最重」は密度異常

水は4度で密度が最大になり、それより高くても低くても軽くなる。この密度異常のおかげで湖底は0度でなく4度に保たれ、水中の生態系が冬を越せる。物理としてはかなり珍しい性質だ。

氷には20種類以上の結晶多形がある

私たちが目にする氷はIhと呼ばれる形だが、圧力・温度条件を変えると、Ic・II・III〜XVIIIなど多数の結晶多形が存在する。木星や土星の衛星の内部では、地球にはない高圧氷が主役になっている可能性が高い。

氷の膨張力が地形を作る

水が岩の隙間に入り凍ると、約9%の膨張で岩を割る「氷楔風化」を起こす。寒冷地の岩肌のギザギザや礫の生成、道路の凍結破損まで、氷の体積膨張は自然と生活の両方で重要な力になっている。

🔬 とことん深掘り:読書ガイド

読み順ガイド(やさしい→専門)

  1. 水と氷のふしぎ図鑑(子ども向け)
    水の三態と密度の関係を写真と絵で理解し、密度異常の起点になる土台を作る。
  2. 水の科学の一般向け書籍
    水素結合と分子構造から水の異常物性を筋道立てて解説し、生命との関係にもつなげる。
  3. 物理化学・氷物理学の大学教科書
    結晶多形・状態図・非平衡熱力学を扱い、氷Ihから高圧氷までの全体像を定量的に把握する。

さらに進む方向

  • 結晶学・物理化学(水素結合と分子性結晶)へ進む
  • 地球化学・海洋学(海氷と海洋大循環)へ広げる
  • 惑星科学(氷天体エウロパ・エンケラドスと生命探査)へ接続する

もっと詳しく:くらべてみる

  1. 液体の水(20度)
    水分子がくっついたり離れたりして密に詰まる(密度1.0g/cm³)
  2. 水(4度)
    水の密度が最大になる(密度異常)
  3. 氷Ih結晶(0度以下)
    水素結合が正四面体状に規則配列し、すきまの多い六方晶(密度0.917g/cm³)
  4. 体積変化
    水100g→氷約110cm³(約9%膨張)

ことばのメモ

水素結合
水分子どうしを引き合う力
水分子
水を作っている小さなつぶ
正四面体
4つの頂点をもつ立体の形
密度
同じ体積での物の重さのぐあい
結晶
原子が規則正しくならんだかたち

よくある質問

氷が水に浮くのはなぜですか?
氷は液体の水より密度が小さいためです。名古屋大学の解説によれば、水が凍ると水素結合で水分子が正四面体状にならび、すきまの多い結晶になるので体積がふえて軽くなり、水に浮きます。
水は何度で一番重くなりますか?
4度で最も密度が高くなります。それより低くても高くても密度が下がる「密度異常」を示し、湖の底が0度でなく4度になる現象や、氷が浮く現象の原因になっています。
氷が水に浮くのは地球にどんな意味がありますか?
冬に湖や海の表面が凍っても、氷が浮いてふたのような断熱層になり、下の水は0〜4度に保たれます。魚や水草はその中で冬を越すことができ、水中の生態系が守られています。
水は何倍くらいふくらむと氷になりますか?
水100gがすべて氷になると、体積は約110cm³になり、およそ9%膨張します。この体積変化が水道管の凍結破裂などの原因にもなるため、寒冷地では冬前の対策が重要になります。

学びのタネ

この問いに関連する本・実験・サービスのご紹介です。

家でできること

  • コップに水と氷を入れ、氷が沈む部分と水面から出ている部分の割合を測ってみよう。
  • ペットボトルに水を八分目まで入れて凍らせ、体積がどう変わるか観察してみよう(フタは開けて安全に)。
  • 湖や池の冬の様子について、凍る場所と凍らない場所の写真を集めて生き物との関係を考えてみよう。

おとな向けに:新書・実用書

とことん深く:専門書・古典

読み放題・聴き放題

家でも教室でも、学びを深める

※ Amazonアソシエイト参加者として適格販売により収益を得ています。A8.net等の広告主から発番されるリンクは順次差し替えていきます。

出典・参考文献

  1. 名古屋大学 宇宙地球環境研究所海洋50のなぜ 4. 氷が浮くのはなぜ? 参照 2026-07-17
  2. 京都大学 理学研究科水分子の向きが揃った結晶氷(プレスリリース) 参照 2026-07-17
  3. 東京大学水/氷の界面に2種目の"未知の水"を発見! 参照 2026-07-17

出典・正確性ポリシー:詳しく読む