海はなぜ塩味なの?

公開:2026-07-17 更新:2026-07-17 読了 約6分

図解

1 STEP 1 雨が陸の岩を少しずつ溶かす(化学的風化) 2 STEP 2 ナトリウム等のミネラルが川で運ばれる 3 STEP 3 川が海に流れ込み、塩の成分が海に到着 4 STEP 4 海水は太陽でじょうはつするが、塩は残る 5 STEP 5 海底の熱水噴出孔からも塩素・ナトリウムが供給 6 STEP 6 何億年もくり返し、現在の3.5%の塩分濃度に

図解:問いを6ステップで読みとく流れ(自動生成)

陸の塩がずっと川で運ばれて海にたまったから。

海の水をなめると、しょっぱい味がしますね。じつはこのしおは、長い長い時間をかけてりくからはこばれてきたものなんです。

雨がふると、水は地面やいわを少しずつかしながら川に流れこみます。岩にはミネラルがふくまれていて、その中に「ナトリウム」というしおの成分があります。川はそれを長い旅でだんだんと海まで運びます。

海にとうちゃくした水は、太陽にあたためられてじょうはつし、またくもになって空にもどります。でもしおの成分はじょうはつしないので、海の中にどんどんたまっていきます。雨ふってじょうはつ、雨ふってじょうはつ、というじゅんかんを何おく年もくりかえすうちに、海はだんだんしょっぱくなっていったのです。

さらに、海のそこにはとても熱い水がふきだしている場所があります。そこからもナトリウムやしおの成分が海にとけだしてきます。だから、海のしょっぱさには空と地面と海そこの3つのみなもとがあるのです。これからもゆっくり、ほんのすこしずつ、海のしおはかわっていくと考えられています。

海水の塩分は世界平均でおよそ3.5パーセント、つまり水1リットルあたり約35グラムの塩が溶けていることになる。塩の中身はナトリウムイオンと塩化物イオンが主役で、これらは陸地の岩石から雨と河川が長い時間をかけて運び込んだものだ。

海底の中央海嶺にある熱水噴出孔からもナトリウムや硫黄が供給され、海の塩の供給源はひとつではない。塩は蒸発しても凍結しても海にとどまるため、流入と流出のバランスが取れた現在の濃度に落ち着いたとされる。

日本近海は黒潮や対馬暖流の影響で、塩分が高めの帯と低めの帯が複雑に入り混じる海域として知られ、気象庁や海上保安庁海洋情報部の長期観測の重要なテーマになっている。気候変動下では塩分分布のさらなる変化も注目されている。

仕組みの科学

海水の塩は化学的には複数のイオンの混合物だ。重量比で見るとナトリウムイオンと塩化物イオンが大半を占め、続いて硫酸イオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、カリウムイオンと続く。これらの構成比はおおむね一定で、世界中どの外洋を取ってもほぼ同じ割合になる。雨水は大気中の二酸化炭素を溶かしてわずかに酸性になり、地表の岩石を緩やかに化学的に風化させる。岩石中の鉱物からナトリウムやカルシウムなどがイオンとして放出され、河川を通じて海に運ばれる。

一方、塩化物イオンは火山ガスや海底の熱水噴出孔からも供給される。海底の中央海嶺では、海水が地殻に染み込んで高温の岩石と反応し、組成を変えながら再び海中へ噴き出す。この循環の過程で塩素が増え、マグネシウムが減るなどの組成変化が起きる。海の塩分組成が世界の海域でほぼ一定(塩分構成比恒常性)なのは、こうした巨大な水循環で混合・均一化されているためだ。流入と流出、蒸発と降水、それぞれのバランスが現在の濃度を絶妙に支えている。

歴史と発見

古代の人類は塩を岩塩や塩湖、海水から得ていた。日本では古墳時代から製塩の遺跡が確認されており、瀬戸内地方の藻塩焼きは古典文学にも登場するほど知られた製塩法だ。塩は保存や調理だけでなく、税や交易の中心にも置かれ、地域経済を形づくる重要な資源として扱われてきた。海水の塩分濃度を正確に測る試みは18世紀以降に本格化し、19世紀のイギリス海軍チャレンジャー号探検航海では、世界の海洋から採取した海水の塩分組成がほぼ一定であることが体系的に示された。

20世紀には、海洋の塩分が気候や海洋大循環と密接に結びついていることが分かってきた。北大西洋では蒸発によって塩分が高くなった海水が冷えて沈み込み、深層水を作る。塩分のわずかな違いが地球規模の海洋循環の駆動力となり、長期的な気候に影響することが理解されるようになった。日本でも気象庁や海上保安庁海洋情報部が海水温・塩分の長期観測を続け、その記録は海洋環境のモニタリングの重要な基盤となっている。

もう一歩先

海水の塩分が時間的にも空間的にも一定ではないという事実は、衛星リモートセンシングの時代にさらに詳しく可視化されるようになった。塩分は海洋大循環、栄養塩の輸送、海氷の生成、降水量分布など多くの環境要素と密接に関係する。気候変動下では蒸発と降水のバランスが変わり、塩分の濃い海域はより濃く、薄い海域はより薄くなる傾向が複数の観測機関で報告されており、海洋熱波や生態系への影響も論じられるようになった。

産業面では、海水から塩を取り出す製塩や、塩素と水酸化ナトリウムを作る食塩電解が古くから営まれ、現代の化学産業の基礎を支えている。淡水化の逆プロセスとして、逆浸透膜を用いた海水淡水化は水資源が乏しい地域で重要な技術だ。生命の起源を探る研究では、初期地球の海の塩分濃度が現在と異なっていた可能性が議論されており、塩の歴史は地球史と生命史の双方を読み解く重要な手がかりになっている。私たちが日々口にする一粒の塩の背後には、岩石・海・大気・生命をめぐる長大な物語が広がっている。

🌱 ためしてみよう!3択クイズ

本文をよんでこたえてみよう。タップでせいかいがでるよ。

Q1. 海の水はどうして塩味がするの?
こたえ:川が岩や土の塩分を運んで何億年もかけて海にたまったから
雨が降ると、水は岩や土の中のナトリウムや塩素などの成分をすこしずつとかします。それが川になって海へ流れ込み、水だけが蒸発して塩分が残ります。これを何億年も繰り返したので、海はだんだん塩辛くなっていったのです。
Q2. 川の水は塩辛くないのに、どうして海だけ塩辛いの?
こたえ:海では水が蒸発するだけで塩は残り続けるから
川の水は塩分をすこし含んでいますが、海に注いだ後、太陽の熱で水だけが水蒸気になって空に上がります。しかし塩は蒸発できないので海に残ります。この「水だけ出ていく・塩は残る」が繰り返され、海は塩辛くなり続けたのです。
Q3. 海の水の塩分は約何パーセントくらい?
こたえ:約3.5パーセント
海の水1リットルには約35グラムの塩が溶けていて、これが約3.5パーセントです。人間の血液の塩分は約0.9パーセントなので、海水はずっと濃いことがわかります。だから海水をたくさん飲むと体に悪いのです。

👤 大人のちょっとした雑学

火山も海の塩分の「仕入れ先」だった

塩分の起源は川からの陸上岩石溶出だけではない。地球誕生直後、大気中に充満していた塩化水素ガスが雨に溶け込み、原始の岩石を強酸で侵食することで大量のナトリウムが海に供給された。現在も海底火山の熱水噴出孔から塩化物イオンが供給されており、川と火山の「二本柱」で海の塩分は維持されている。

海の塩分濃度は3.5%で35億年間ほぼ不変

驚くべきことに、海の塩分濃度は現在の約3.5%を35億年近く安定して維持している。これはナトリウムが玄武岩質海底に吸収される「逆風化」と、河川からの供給がほぼ均衡しているためだ。この安定性が地球の生命誕生・維持に不可欠だったと考えられており、「塩分緩衝機構」と呼ばれる地球規模の化学的恒常性の証拠とされている。

死海はなぜあんなにしょっぱいのか

死海の塩分濃度は約34%と、通常の海の約10倍。流れ込む川(ヨルダン川等)はあるが流れ出る川がなく、年間蒸発量が流入量を上回る極乾燥地帯にあるため、塩分が凝縮し続ける。これは「海はなぜ塩辛いか」の仕組みを極限まで押し進めた実例であり、理論の説得力を高める教科書的な事例として海洋化学者に重宝されている。

🔬 とことん深掘り:読書ガイド

読み順ガイド(やさしい→専門)

  1. 謎解き・海洋と大気の物理(保坂直紀、ブルーバックス)
    ブルーバックスの中でも理数系入門として定評があり、海洋物理の基礎(密度・循環・コリオリ力)をていねいに解説。海の塩分が循環にどう関わるかを物理的視点で理解するための土台として最初に読むと以降がスムーズ。
  2. 海はどうしてできたのか(藤岡換太郎、ブルーバックス)
    海の誕生から塩分の起源まで地球史のスケールで語る。川・火山・大気の相互作用という多角的な塩分起源論を一般向けに整理しており、専門書に進む前の概念整理として最適。
  3. 水の惑星「地球」46億年の大循環(片山郁夫、ブルーバックス)
    地球内部と表層水のダイナミクスを惑星科学の立場から論じる最新書(2024年)。マントル内水循環や将来の海消滅まで踏み込み、塩分問題を地球システム科学として捉える視野を与える。
  4. 海洋地球化学(蒲生俊敬、KS自然科学書ピース・講談社)
    海水の化学組成・微量元素・同位体比など塩分の化学的背景を体系的に扱う大学院レベルの標準テキスト。海水のイオン組成がなぜ現在の比率に収束したかの定量的理解に必須。
  5. 地球化学(佐野有司ほか、現代地球科学入門シリーズ12)
    元素の起源から地球・海洋の化学進化までをカバーする教科書。塩化物イオンやナトリウムの惑星スケールの起源論(揮発性元素の凝縮・火山脱ガス)を学ぶ最終段階の参照先として位置づけられる。

さらに進む方向

  • 海水の同位体地球化学(87Sr/86Sr比による海水の化学進化の再構築)へ進む場合はGEOCHIMICA ET COSMOCHIMICA ACTA誌の古典論文群へ
  • 海底熱水循環と塩分フラックスの定量化に興味があれば、深海掘削計画(ODP/IODP)の技術報告書と熱水噴出孔化学の専門論文へ
  • 蒸発岩(エバポライト)鉱床の地質学的記録から過去の海水塩分を復元する古海洋学方向へ進む場合は、堆積地球化学の専門書へ
  • 大気・海洋の共進化(ハビタブルゾーン研究)の観点から塩分安定性を議論したい場合は惑星科学・系外惑星大気研究へ
  • 現代の海洋酸性化と塩分変動の気候変動連動を研究するなら、IPCCの海洋・雪氷圏特別報告書(SROCC)と現業海洋学の数値モデル論文へ

もっと詳しく:しくみのながれ

  1. STEP 1
    雨が陸の岩を少しずつ溶かす(化学的風化)
  2. STEP 2
    ナトリウム等のミネラルが川で運ばれる
  3. STEP 3
    川が海に流れ込み、塩の成分が海に到着
  4. STEP 4
    海水は太陽でじょうはつするが、塩は残る
  5. STEP 5
    海底の熱水噴出孔からも塩素・ナトリウムが供給
  6. STEP 6
    何億年もくり返し、現在の3.5%の塩分濃度に

ことばのメモ

ミネラル
金属を含む小さなつぶの仲間
ナトリウム
しおを作る成分のひとつ
じょうはつ
水が空気に変わって消えること
熱水
海底からふき出す熱い水
塩分濃度
海水にとけるしおの多さの割合

よくある質問

海の水を全部蒸発させると塩はどれくらいになりますか?
海水1リットルから約35グラム、大さじ2杯ほどの塩が取れます。世界中の海なら厚さ45メートル以上の塩の層ができる量と試算されています。
塩湖はなぜ海より塩が濃いのですか?
出口のない湖では水だけが蒸発して塩が残り続けるからです。死海やグレートソルト湖などが知られ、海水より何倍も濃い塩水になることがあります。
海の塩分はこれから変わっていきますか?
気候変動による蒸発と降水のバランス変化で、地域ごとに塩分が濃くなったり薄くなったりする傾向が観測されています。長期的な海洋観測で監視されています。
川の水も少ししょっぱいですか?
川にもごく微量のミネラルは含まれていますが、海水の千分の一以下のため、人間の舌では塩味として感じることはまずありません。

学びのタネ

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家でできること

  • コップに水を入れて塩を少しずつ溶かし、海水と同じ3.5パーセント濃度を作って味比べしてみよう。
  • 家にある食塩のパッケージで、産地が海塩か岩塩かをチェックしてみよう。
  • 気象庁の海洋情報ページで、今日の日本周辺の海面塩分の分布図を見てみよう。

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出典・参考文献

  1. 学研キッズネットなぜ、海の水はしょっぱいの?(科学なぜなぜ110番) 参照 2026-06-26
  2. 東京農業大学海の水はなぜしょっぱいか?体にも塩がある 参照 2026-06-26
  3. 名古屋大学 宇宙地球環境研究所海洋50のなぜ 3.「しお」ってどこからきたの? 参照 2026-06-26

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