図解
図解:問いを6ステップで読みとく流れ(自動生成)
星の光が大気のゆらぎでまがされて目に届くからだ。
夜空を見上げると、星がチカチカとまたたいて見えますね。じつは星じたいが点滅しているわけではなく、地球の大気のせいでそう見えるんですよ。
星から地球までの光は、何百光年もの長い旅をしてやってきます。地球の大気にとうちゃくする直前まではまっすぐな光ですが、大気の中はあたたかい所や冷たい所がまだらにあり、いつもゆらゆら動いています。光がそのゆらぎを通るとき、わずかに進む方向がまがり、明るさや色までも一瞬で変わってしまうのです。
これが「またたき」のしょうたいです。地平線の近くの星ほど大気を通る道のりが長いので、強くまたたいて見えます。頭の真上にある星は短い大気をぬけるので、あまりまたたきません。
また、月や近くの惑星はあまりまたたかないのも面白いポイントです。これは星よりも近くにあって、地球から見た「光の大きさ」が大きく、ゆらぎでまがされても全体としてはあまり明るさが変わらないためなのです。星のまたたきは、はるか遠くの宇宙と、わたしたちのすぐ上の空気のあいだで起きている、しずかなふしぎなのですね。
星のまたたきは大気のゆらぎ(シーイング)が引き起こす現象で、天文学では大気差や大気の屈折率の変動として説明される。空気の温度差により屈折率がわずかに変化し、光線がランダムに方向を変えるため、地上の観測者には星が明滅して見える。
国立天文台によると、シーイングが安定している夜は星像が引き締まり、天体写真や望遠鏡観測の質が大きく向上する。山頂の天文台が標高の高い場所に建てられるのは、大気が薄くシーイングが良いためでもある。
惑星は地球からの距離が近く視直径が大きいため、ゆらぎが平均化されて見える光の量が変動しにくく、ほとんどまたたかない。星をはっきり観測するためにJAXAやNASAは大気の外に望遠鏡を打ち上げ、宇宙からの観測でこの問題を解決している。
仕組みの科学
星のまたたきは大気の乱流による屈折率変動が原因である。空気は密度や温度のわずかな差で屈折率が変わり、上空数十キロメートルにわたる多層の乱流を通過する星の光は、進路と振幅と位相が常に微小に変化する。これが地上の観測者には明るさのゆらぎとして観測される。天文学ではこの現象をシンチレーション、観測条件の良し悪しをシーイングと呼ぶ。
星のシンチレーションは色のゆらぎとしても表れ、ベテルギウスやシリウスのような明るい星では赤や青に色変わりして見えることがある。これも大気が波長ごとに屈折率を変えるためである。大型望遠鏡では補償光学と呼ばれる技術で大気のゆらぎをリアルタイムに測定し、可変鏡で打ち消すことで星像をシャープに保つ。地上望遠鏡が宇宙望遠鏡並みの解像度を得られるようになった現代の技術革新だ。シンチレーションの大きさは標高や気象条件で大きく変わるため、観測サイト選定はこれら大気特性の長期測定から始められる。観測天文学はまさに地球と宇宙の境界面を扱う科学であり、光ひとつぶに込められた情報の取り出し方に多くの工夫が凝らされている。
歴史と発見
星のまたたきは古代から人々の関心を集めてきた。古代ギリシャの哲学者は星のきらめきを神秘的な性質として捉え、東アジアの文学でも瞬く星は儚さや幸運の象徴として詠まれてきた。科学的な説明が進んだのは17世紀以降、望遠鏡の発展で大気の影響が定量的に観測できるようになってからである。
20世紀には電子的な観測機器の発達で、シンチレーションの統計的な性質が明らかになった。1950年代には電波天文学にも大気シンチレーションが影響することが分かり、星と銀河の見え方を制御する重要な要素として研究されるようになった。日本でも国立天文台がハワイのマウナケアにあるすばる望遠鏡や、岡山天体物理観測所などで補償光学の研究を進めている。宇宙の理解は大気との対話なしには成り立たない。観測機器の高精度化と並行して、画像処理や統計手法の進歩が大気ゆらぎの影響を取り除く有力な手段になっており、データ科学と天文学が密接に協働する時代に入っている。
もう一歩先
現代の天文学では、星のまたたきは観測の障害というだけでなく、地球大気そのものを理解する手がかりにもなっている。シンチレーションのパターンから上空の風速や温度勾配を推定する研究があり、気象学と天文学の境界領域として面白い。低軌道衛星の光跡を観測することで大気の微細構造を測ることもできる。
ハッブル宇宙望遠鏡やジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡などの宇宙望遠鏡は、大気の外に出ることでシンチレーションの影響を完全に取り除き、宇宙の遠方銀河や系外惑星の研究を可能にした。地上望遠鏡では補償光学に加え、複数望遠鏡を結合する干渉観測法も発展している。星の小さなまたたきの背後には、地球と宇宙の境界をめぐる科学技術の大きな進歩が広がっている。子どもが夜空を見上げて感じるあのチカチカは、いまも世界中の研究者を動かし続けている、宇宙への入り口でもある。空のしくみと宇宙のひろがりを同時に学べる、たいへん贅沢な題材だといえる。
🌱 ためしてみよう!3択クイズ
本文をよんでこたえてみよう。タップでせいかいがでるよ。
Q1. 星の光がちかちかするのは、何のせいでおきるの?
Q2. 宇宙ステーションから星を見たとき、またたいて見える?
またたきは地球の大気が原因です。宇宙ステーションは大気の外にあるため、光が空気にじゃまされません。だから星はまたたかず、一定の明るさでしずかに輝いて見えます。宇宙飛行士が撮影した星の写真にまたたきがないのは、このためです。
Q3. 星と同じように空に見える惑星(わくせい)はなぜあまりまたたかないの?
遠い星は光る点(1点)として見えるため、大気のゆれで光がずれると明るさが大きく変わります。でも惑星は地球に近く、望遠鏡で見ると面として見えるほどです。面のあちこちから届く光がならされるため、またたきが打ち消し合い、しずかに輝いて見えます。
👤 大人のちょっとした雑学
またたきが強い夜ほど嵐の前兆
大気のゆらぎが激しいほど星のまたたき(シンチレーション)は強くなる。低気圧が接近すると上空の大気が乱れるため、星が激しくまたたく夜は翌日に天気が崩れやすい。農漁業の経験則「星がまたたくと雨」はこの大気光学的現象が根拠になっている。
またたきの色変化は大気分散の証拠
またたく星が赤や青に色を変えて見えることがある。これは大気が波長によって屈折率が異なる分散現象によるもの。短波長の青い光は長波長の赤い光より大きく曲がるため、大気のゆらぎが強いとき、色ごとに光路がずれて色づいたまたたきとして観測される。
天文台は標高が高い場所に建つ本当の理由
ハワイのマウナケア山(標高4,200m)などに大型天文台が集中するのは単に空気が薄いためだけでなく、地表付近の乱流層の大部分を避けられるからだ。シンチレーションは対流圏下層で最も強く起きるため、上空に出るほど大気のゆらぎが減り、より鮮明な星像が得られる。
🔬 とことん深掘り:読書ガイド
読み順ガイド(やさしい→専門)
- 図解・気象学入門(古川武彦・大木勇人、ブルーバックス)
大気の温度・密度・対流の仕組みを図解で丁寧に解説する入門書。シンチレーションの前提となる大気の構造と乱流の概念をここで押さえることが最短経路。 - すべての人の天文学(岡村定矩監修、日本評論社)
天文観測と大気の関係を含む、大学教養レベルの天文学全般を網羅する教科書。星の見え方・測光・大気差などが系統的に扱われており、シンチレーションを観測現象として位置づけるのに適している。 - 光の気象学(柴田清孝、朝倉書店 応用気象学シリーズ)
大気光学現象を正面から扱う専門書。屈折・散乱・放射伝達を第一原理から展開しており、シンチレーションの定量的理解に必要な理論的基盤がすべて揃う。 - 大気物理学(J.T.ホートン著、廣田勇・会田勝訳、みすず書房)
大気放射・対流・乱流を含む大気物理の古典的教科書。シンチレーションを引き起こす大気乱流の統計的性質(コルモゴロフ乱流理論)への橋渡しとなる。
さらに進む方向
もっと詳しく:しくみのながれ
- STEP 1遠くの星から光が地球へ向けて旅をする
- STEP 2光が地球大気のすぐ上に到着する
- STEP 3大気は温度差で屈折率がゆらいでいる
- STEP 4光が乱流でランダムに屈折する
- STEP 5地上で明るさ・色のゆらぎとして観測
- STEP 6宇宙望遠鏡や補償光学で問題を解決
ことばのメモ
- 大気
- 地球をつつむくうきの層
- 屈折
- 光のすすむ向きがまがること
- シンチレーション
- 星のあかるさのゆらぎ
- シーイング
- 天体観測の見えやすさ
- 補償光学
- ゆらぎを打ち消す望遠鏡の技術
よくある質問
全部の星がまたたいて見えるの?
惑星もまたたいて見えますか?
星の色まで変わって見えるのはなぜ?
宇宙の望遠鏡で星はまたたかないのですか?
学びのタネ
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家でできること
- 晴れた夜に頭の真上の星と、地平線近くの星のまたたき方の違いを観察して、家族で比べてみよう。
- 国立天文台の公開サイトで、シーイングや補償光学のページを読んでみよう。
- JAXAやNASAのウェブで、ハッブル・ウェッブ宇宙望遠鏡が撮影した星雲や銀河の画像を見てみよう。
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出典・参考文献
- 天文学辞典(日本天文学会)シンチレーション 参照 2026-06-26
- JAXA宇宙望遠鏡プロジェクト一覧 参照 2026-06-26
出典・正確性ポリシー:詳しく読む
星の光は何億キロメートルも旅して地球の大気(空気のそう)に入ります。大気は温度や密度がつねにゆれ動いていて、光がその中を通るとき、まるで水の中で見るストローのようにまがります。このまがり方が絶えずかわるため、目に届く光が強くなったり弱くなったりして、またたいて見えるのです。